子どもの頃の思い出
私は幼稚園の頃から電子オルガンを習っていました。
教室へ行くと、レッスンの防音室が整然と並んでいま
す。私はその防音室がとてもキライでした。
待合室にはゆったりした音楽が流れているのに、レッス
ンを受けるために防音室に入ると、完全な無音になりま
す。シーンと静まりかえった空間にぽつんと置かれた電
子オルガン。そしてペンを片手に持ったこわい先生が、じ
っと横に立っているのでした。
レッスンはとても厳しく、私はいつも泣きながらオルガンの
前に座っていました。防音のために泣き声は壁に吸い込まれ
ていき、息苦しく感じます。レッスンは30分でしたが、い
つもその時間がとても長く感じられ、早くここから抜け出したい
とばかり思っていました。
今でも音楽教室の防音室を見かけると、息が詰まるあの時の
感じを思い出します。いまでもやっぱり防音室は苦手です。
息子のダンス
以前2階建てのアパートに住んでいたことがあります。私たち
家族は2階に住んでいて、下の階には若いお兄さんが一人暮らしを
していました。
息子はまだ2歳くらいでした。普段は下の階のお兄さんに迷惑が
かからないように静かに生活しようと心がけていましたが、ある
CMがテレビから流れてくるときだけは別でした。
そのCMは、楽しい音楽が流れ、子どもたちがみんなで歌いながら
踊っているCMでした。そのCMを見ると、息子はとたんに立ち上
がり、足を踏みならして踊り始めるのでした。下の人に迷惑になる
からやめなさい、といくら注意しても聞きません。すっかりそのCM
に夢中になってしまうのです。
下の階のお兄さんは、日中は出かていけることが多かったので、それが
せめてもの救いでした。アパートの前で会っても、いつもにこにこ顔で
挨拶してくれたお兄さん。きっと息子の足を踏みならす音は騒音だった
だろうな…と申し訳なく思っています。
実家の寝室
私の実家は、車通りの多い国道沿いにあります。交通の便が良く、
買い物するスーパーも近くにあるため、普段はとてもいい場所に
家があるなぁと思っているのですが…。
夜になると話は別です。一晩中車がびゅんびゅんと走る音が、うる
さいのです。窓を閉めていれば防音効果で音はあまり気になりませ
んが、窓を開けると…眠れたものではありません。
ちょうど両親の寝室は国道の側にあるため、夏の暑いときでも窓を
開けて寝ることは出来ないようです。暑いけど窓を開けると車の騒音
がうるさい、うるさいけど窓を開けないと暑い…ということの繰り
返し。両親は静かな部屋でないと眠れないのです。
最近では、真夏になると寝室で寝ることをあきらめ、布団を居間に敷
いて寝ているのだとか。この方が静かに眠れるけど、毎日布団を居間に
持ってくるのが大変だ…と両親は苦笑いしています。